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【コラム】佐々木美智代:縁の下の”特攻隊” ヘアメイク業界で躍進する女性


経営がしたい。楽して稼ぎたい。だからヘアメイクの世界に飛び込んだ。

 専門学校を卒業後、ヘアメイク事務所に所属していましたがすぐにフリーとして独立。

 

 その技術が多くの映像制作会社などで認められると、当時のアシスタントさんらを引き連れるようにして、25歳でヘアメイクアーティストの人材派遣業「特攻隊」を起業。

 29歳になると自身は派遣をする事に徹して他の方のヘアメイクを行う事を辞めてしまいます。

 

 「特攻隊」という名前は、インパクトを重視した上で「いつでもどこでも伺う」というひたむきな態度を表す言葉として命名しました。

 

 

 

 

 もともと会社経営に興味があったという佐々木さん。早くより起業することを考えていたそうです。

 

 そもそもヘアメイクの世界に飛び込んだのは起業をはやくにしたかったからだそうで、「経営をやる」という目標の裏には、好きな時に自分がしたいと思える事ができるような立場でありたいという心がありました。

 

 もちろん自分が楽をしたいという考えもありましたが、それよりも「何かしたいけど明日仕事に行かなきゃいけない…」という足かせになる事を嫌がったのです。

 いざ経営をするとなり活動していくと、決して楽な事ではない事はすぐに気が付きました。すべての責任を負う必要がありますし精神的につらい事も多々あると言います。

 

 

 開始当初は、大手メイク事務所のスタッフさんの寝坊や勘違い、また制作会社スタッフさんの発注ミスなどによる人手不足を補うなどの小さなおこぼれの仕事をひとつひとつ丁寧にこなしていくことで仕事の基盤を形成していきました。

 

 また、基盤があらかた完成しても、お仕事に行ったら自分が出来る最大限のことをするようにし、気を遣い、気を回して、演者が帰るときに嫌な想いが無いようにします。

 仕事でお世話になった方がその取引先を辞職するとなっても交流を続けます。

 大概の方は仕事に関係ないからといってスルーするのは佐々木さん曰く「大きな間違い」で、まるで違う業界にその方がいっても、その方には人脈があります。どう仕事に繋がるかなんてわかるわけがありません。

 

 

 仕事はどこから入ってくるかはわからない。決して想像していた楽な経営ではありませんが、こういった一つ一つの行動が数十年の特攻隊の歴史を繋げて、経営を成功させているのです。

 

 

 

 

 

華やかな世界ではないヘアメイク業界にに向いているのはどんな人?

 ヘアメイクスタッフに重要なのは、「技術」と「センス」です。

 

 専門学校を卒業してすぐの若い頃はどうしても上世代の同業者よりも技術で劣ります。

 かと言えば40~50代となってくると、今度は自身のセンスが時代に合わなくなってきてしまうのです。

 

 日々勉強を続けていても、自身が若い頃一番初めに習得した技術やセンスは頭に良い意味でもこびりついており、メイク材料の持ち物1つにしても、新しく良いものがどんどん出ているにも関わらず、「私はこれじゃなきゃ…!」と従来商品を使い続けているヘアメイクスタッフもいると言います。

 

 また、妊娠~育児や介護などで職を長期間離れてしまうと、流行に追いつくことが難しくなってしまうなどどの年代になっても日常的に勉強を続ける必要のある職種なのです。

 

 近年はインターネットの普及により、技術やセンスが多少劣っていたとしても、ヘアメイクを施す相手が好むようなメイクや髪型を容易に予想してその相手専用の予習ができるようになりました。

 

 技術やセンス以外にも、メイクルームは演者が緊張の中で唯一落ち着ける場所でもあるため、緊張を少し解き落ち着ける空間づくりや話術や配慮が出来るような方が望ましいのです。

 技術やセンスは学べば後からでもついてきます。

大切なのは「御縁」人脈を大切にすることで広がる仕事の幅

 

 だけでも1億人を超えている日本で会って話をするだけでも十分な御縁なのに、パートナーや自身の子どもはおろか、「特攻隊」に職を求めに来てくれた方などはとてもない強い御縁であると考えています。

 

 ごまんとある美容系の専門学校から数多くの卒業生が生まれている中、希望する職種についている方はそれほど多くないのです。

 

 大々的にやっている業界ではないので仕事の広がりは未だ口コミが主流です。

 より良いインパクトを残し縁を大切にすることで次の仕事に繋がります。コロナを乗り切り、次の時代を生き抜くにも縁は重要なのです。

 

 

 

 

コロナ流行、YouTubeの台頭、ヘアメイク業界のこれから

  コロナが流行しだして以降、各テレビ局は演者を自宅からの出演に切り替えたり、そもそも出演者を減らしたりするなどの対策を行いました。その結果としてヘアメイクを施す母体数が激減してしまい、コロナが流行しだした2020年3月からはかなりの影響が出だしたと言います。

 

 コロナの流行以前の状態に戻るかと言えばそうではないといい、露出の中心がテレビ以外の自宅から出来るような配信や動画投稿などにシフトチェンジを余儀なくしている方が多いためです。今はゆっくりと自分のペースで流れを見ながら業界の変化を受容していくつもりであると言います。

 

 ヘアメイク業界にも変化が必要な時に来ていると言います。佐々木さんご自身が年齢を重ねていく上での得た感覚や知識を基にこれからも躍進を続けるということで、常に明確なビジョンを掲げて今日も躍進しているのです。

 

 

 

 


佐々木美智代 プロフィール

 

ヘアメイク事務所職を経て独立。フリーのヘア&メイクアップアーティストとしてバラエティから政治経済番組まで主にテレビを中心とした活動の後、1988年ヘア&メイク、スタイリスト、着付け師の派遣事務所「ヘア&メイク特攻隊株式会社」を設立。美容家として多くの人を美しくし、自らも美のカリスマを目指し探究を重ねる。また臨床心理カウンセラーおよび臨床心理療法士として「佐々木美智代カウンセリングルーム」を開催。


取材はZOOMを利用して行いました。

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梨田いづみ

大阪府出身。MCやコミュニティFMのラジオパーソナリティを務める傍ら、舞台女優としても活動する。


訂正:2021/11/16