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【社説】発展途上国の識字率を憐れむ前に日本の識字率の低さが目に留まる。機能的非識字について

識字率は貧困と比例する。貧困などの理由により学校に行けないなど児童の学習機会が奪われると、「文字を読む」といった基本的な能力でさえ得ることが難しくなる。このような問題については日本国内においては100年以上前から解決済みであり、発展途上国など一部の遠い国のお話しであると思われるのではないだろうか。実は筆者もそう考えていた。

 

2015年8月25日に英紙The Guardianに掲載された記事 Illiteracy will cost global economy $1.2tn in 2015 によれば日本は非識字による経済損失が84.21億ドルに上るのだそうだ。1ドルを100円としたとしても8420億円ということになる。逆に「非識字による経済損失」があるのではないかと容易に想像できるバングラデシュやアンゴラといった国の経済損失は10億ドルを下回る。

 

これに違和感を覚える方も多いだろう。日本国内において識字できない方を見た経験がある方はどれだけいるだろうか?数十年に及ぶ長い人生の中で数多の人と出会い、その中で識字が出来ないと訴える日本人はいないのだ。

なのになぜ日本国は非識字によって8兆円を超える経済損失があると言われているのだろう。

 

 

これは、日本人の15%超が「機能的非識字」であるとされているからである。

 

 

 

 

機能的非識字とは 文字が全く読めない「文盲」とは違い、ひらがた・カタカナなどの簡易的な文字の解読は可能で一定の文章解読能力を得て居ながら、書かれている内容を理解し、活用するということが出来ない方を指す。

 

薬のラベルを読む、食品の栄養表示を読む、小切手帳のバランスをとる、求人応募への記入、職場での通信を読んで対応する、住宅ローン申請書への記入、銀行取引明細書を読むなど。The Guardianにはこう書いてある。もちろん他国の記事であるし日本語ではないので文化もニュアンスも変わるから理解に苦しむかもしれない。

 

つまり、家具家電の取扱説明書が理解できないのだ。経済損失に繋がる要因としては、複雑な業務にかかせないマニュアルの解読が出来ない。災害や業務イレギュラーなど緊急時対応ができないなどが挙げられるだろうか。

また最近ではLINEやTwitterなど短文で簡潔な文章は理解できるけれど、新聞は読めない。最近の学生はSNSを利用して簡単に情報を収集できるために自分が機能的非識字であることを悟らないのだ。

したがってこの文章だって到底理解は難しい。この文章は残念ながら機能的非識字である日本人の15%には届かない。

 

 

先進国になると、労働集約型の業務から高度なリテラシーを要求される業務が増加し、その業務の方が同時間あたりの業務価値が向上する。単純に言うとパソコンカタカタしてた方が向上でガシャンガシャンするより給料が高いということ。

近年はコロナ禍による新な生活様式を徹底することが求められる中で、より労働者を集約するという現場が減少している。会話ではなく文字のみによる報告連絡相談も増えている中で、より機能的非識字の課題は大きくなっていく。

 

一般的に、読み書きの基本能力は15歳を機に伸び悩む傾向にある。つまり中学卒業時には中学国語の教科書に書かれてあるすべての言葉を理解した状態で卒業しなければならないということだ。当たり前かもしれないが、結果として日本人の15%はそれができていない。40人クラスならばその中の6人が当てはまり、「落ちこぼれクン」は1学級に6人もいるだろうか。あなたの周りにも「隠れ落ちこぼれクン」が混ざっているかもしれない。

 

 

 

求められるリテラシーの高さと、SNSの普及による機能的識字の必要性理解の遅さは反比例の状態にある。これにより1兆円に近い経済損失を出す日本国は早急に子どもの言語発達教育を促進するような取り組みが求められる。