厚生労働省の報告書によると、日本の子ども(17歳以下)の貧困率は13.5%(2018年)です。
つまり、7人に1人の子どもが貧困状態に陥っているということになります。
先進国の中でも34カ国中10番目に貧困率が高く、深刻な問題となっているのです。
今回は貧困問題をはじめとする社会問題を扱うサイトとして、あらためて相対的貧困について簡潔にまとめました。
相対的貧困とは何か?
大前提として、「貧困」には絶対的貧困と相対的貧困があるとされています。
絶対的貧困はいわゆる「貧困」のイメージそのもので、アフリカ諸国などでみられるような、人間として最低限の生活を送ることすら難しいような状態を指します。
飢餓に苦しみ、必要な医療を受ける事が難しい。このような方々です。
これに対し相対的貧困は、その方が住む国や地域などの文化水準、生活水準と比較して困窮した状態を指します。
世帯の所得がその国や地域の「等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態」と定義されています。
具体的に例えるならば
- 親が病に伏したことで十分な所得の無い世帯
- 家計補助のためにアルバイトをしなければならない子どもがいる世帯
- 金銭的理由で子どもの進学を諦めなければならない世帯
というのが挙げられます。
なので、絶対的貧困と違い募金活動で解決が出来るという問題ではありません。
相対的貧困で苦しむ方の人数
プロローグで、7人に1人の割合で貧困となっていると書きました。
ただし、先ほどの例示のような家庭の数というわけではなく、あくまで確定申告などの状況から数値的・定義的に貧困となっている方を示したのであり、実態のみえない状態が続いています。
日本はこの数十年の停滞した経済状況によりこの相対的貧困が進んだとされています。企業の保守、合理化の波をうけて非正規雇用が増加したことや、先進国となって長いために貧困の連鎖が発生しているとの指摘もあります。
相対的貧困の入り口
親が病に伏すことで世帯収入が減少する、というのは昔ながらの相対的貧困の原因の一つです。
近年増加している原因は、非正規雇用・離婚率の増加によるひとり親の増加などとされています。
母子家庭の貧困率は親が仕事をしている場合でも58%と、諸外国と比べて最も高い割合になっています。
相対的貧困になるまいと、親がダブルワーク、トリプルワークなど無理をすることで体調を崩したり精神疾患を患ったりするケースも増えてきていると言います。
こうなれば残された子どもは家事をしたり兄弟の世話をしたり、ヤングケアラーとして世話をしなければならないケースも増えてきています。核家族化が進み、近くに助けを求められる家族が少なくなっていることも原因の一つでしょう。
相対的貧困と子どもに与える心理的影響
相対的貧困に陥った世帯の子どもは多くの心理的影響があります。
必要最低限以上のものを買い与えてもらえない、新品ではないなどの理由から、学校の同級生との劣等感を感じたりいじめに発展したりします。
「なんで僕だけ?」「また私ばっかり…」といった負の感情が蓄積されていき、
「どうせ僕なんて」
と諦めの感情に発展してしまうのです。
少し年齢を重ねていて中高生となれば、しっかりと自我をもつ子どもも一定数いるでしょうが、自我の芽生えによる反抗期のベクトルが悪い方向に向かってしまうと、非行・虐待などへ発展してしまう可能性もあります。
貧困の連鎖
親の経済的な困難は子どもにさまざまな影響を及ぼします。これによる影響を「貧困の連鎖」と表現する事があります。
内閣府(2014)によると、生活保護世帯を全国平均と比較すると
中卒率は7倍
高校中退率は3・5倍
大学進学率は3分の1
となっているとの報告があります。
親の経済的な困難によって学習や体験の機会を失い、学力が低下し、不安定な就業につながり、その子もまた貧困に陥るというスパイラルに陥る危険性があるのです。
実際に親は子どもに対して自身以上の学習体験の提供を行なおう(高卒の親が子供に大卒を狙わせようとしない)と考える人の数は少なく、スパイラル的に貧困から脱却できていないのです。
相対的貧困の出口はあるのか
相対的貧困はその数そのものは減らすことが出来ても、厳格や共産主義国家でない限りゼロにすることはできません。
ただ日本国内においては各支援団体や行政などが正規雇用の促進や必要物資の援助などの取り組みをしていますので、まずはそのような団体を頼ることが唯一の出口なのではないかと思います。
相対的貧困はスパイラル的に陥るので、ある日突然なるものではないので入口にはいってしまったことに気付きにくいという性格もあります。
またある程度相対的貧困状態が続いても、住居や衣服などでは客観的に見抜くことが難しく支援の手が差し伸べられにくい状態にあります。
親の疾病や子の非行など、家族として取返しのつかない事態に陥る前に貧困となっている方が気付き支援を受ける必要があるのですが、その糸口はなかなか難しいというのが現状なのです。
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