どや?シェルター?
あいりん地区に住む労働者の中で、固定の住居の確保が難しい程に収入が安定せず低水準な方向けの宿泊施設として挙げられるのが、「どや」と「シェルター」です。
わけのわからない単語と、まるで戦争禍にいるかのような響きです。
どや、とは「宿」という言葉を逆さにして発音したもの。
自分の家を「宿」と言ってしまうと、自身がホームレス生活であることがばれてしまいます。
またあいりん地区の外に住む人々にとって、労働者が「宿」と言っていると、高級旅館や民宿なども「宿」に含まれていますから、質素な空間である木賃宿を「宿」と発音したくないという感情も含まれているようです。
そして「シェルター」。
もちろん襲撃時に避難するものではありません。
これは、「釜ヶ崎支援機構」という支援団体が無料で寝床・シャワーを提供してくれているもの。洗濯機や休憩室等も完備されており、自立に向けた取り組みが行われている施設です。
質素な空間ではありますが、日雇いの仕事を取ることができなかった場合でも、雨風をしのぐことができ、布団で横になれる所から、あいりん地区住民から重宝されているのです。
近年では収入の安定化や労働者人口の減少によって、「どや」を利用する方は減少していると言います。
しかし、あいりん地区は多くの鉄道路線が密集し、空港アクセスも担っている新今宮駅及び動物園前駅に近い事から、近年では海外からの旅行者に人気が高いそう。
日本では治安の悪いエリアとして名高いですが、世界を広く見てみれば治安は良好な部類に入ります。
物価は決して安くない日本において、宿代を抑えられる地域として有名になっているのです。
まだ働ける。自立できる。
あいりん地区は決して華やかとは言えない生活環境があります。そこで住む人々を支援するために活動しているNPO団体があります。
「釜ヶ崎支援機構」はあいりん地区の人々を支えるNPO法人です。あいりんシェルターやそれに付随する「禁酒の館」などを運営する他、衣料の無償提供や就業支援の相談窓口を開くなど、あいりん地区の人々の生活に寄り添った活動を行っています。
あいりん地区に住む人は「まだ働ける」、「自立できる」、という意志を持った方が多いようです。近年は地区住民の高齢化が進んだ事による生活保護受給者が増加傾向にあります
しかしながらそのような方は基本外に出ず介護センター等で暮らしているので、あいりん地区内で外に出て生活している方で生活保護を受給されているのは少数派なのです。
「自立」と言っても、その意味解釈は人それぞれです。NPOや行政が提供・仲介する仕事をやりながら自らで生計を立てる人もいますが、中には誰の手も借りないで生活しようと試みる方を居ます。考え方も様々ですが、共通して言えるのは貧困しているからと言って他人の手をあてにするような汚い考えが無いということでしょう。
生活保護はその不正受給が長年問題視されています。
ただ、あいりん地区内において不正受給をしているという方はいないのではないでしょうか。
「まだ自分の手で」というプライドが、今のあいりん地区を形成しているのかもしれません。
それぞれの考えに寄り添う支援を
あいりん地区の人々に対して我々が出来る事は何なのでしょうか。
それは「公募型」の支援です。
貧困地域への支援となるとどうしても我々が積極的に地域に参入して支援を平等に行き届かせる事を考えてしまいます。
しかしあいりん地区は極度の貧困地域という訳ではありません。治安が悪いわけでもありません。様々な考えを持った方が暮らす場所ですので、
「価値あるものを全員に配布します。」
というものではなく、
「このような支援を行います。受けたい方はいますか?」
という支援が最適でしょう。
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