不動産勤務中、親子の命を救い人生を変えた経験。
中学校を卒業後、建設現場などで働きながら生活をしていたという坂本さん。足を骨折してしまったことにより体力仕事が難しくなったことから、18歳で不動産会社に転職します。
すると、ローンの審査に通らないなどといった金銭的理由や、凶悪な犯罪歴がある方などを追い返さなければならない事態となるお客様が月に複数人もいるということを知り、
「何故この人たちは部屋を借りる事ができないのだろう…」
と疑問に思いはじめます。
ある時、自身がエリアマネージャーを務めている店舗で、部下がある一人のお客様に賃貸のお断りをしている現場を目撃します。
当時の坂本さんは、自身のエリア内の集合住宅オーナーの方と話しをする機会も多くなってきており、空室に悩むオーナーを沢山見ていました。
そのお客様は、公園で3日3晩寝泊りをしなければいけないほどお金に困っており、なんと中学生の娘さんもおられるという方でした。母子で水しか飲まずに生きながらえているというのです。
坂本さんはこのお客様を、空室に悩むオーナー様に紹介。
そのオーナーは、このお客様の入居を快諾し、なんと衣食の補助や生活補助の申請までかって出たというのです。
こうして、この母子は衣食住の確保や生活保護の受給で社会復帰に成功する事となりました。
この経験で、自身の仕事や行動がある2人の命を救い人生を変える事ができるのだという事を悟るようになったのです。
コロナ禍で居住支援が注目される中、増える悪徳業者とそれに振り回される支援者たちの惨状。
生活に困ったとき、住所が無ければ生活保護を受ける事ができません。
坂本さんの団体「生活支援機構ALL」は、10年以上前よりこの事業を始めており、近年政府が制度化した「居住支援法人」では、登録番号が大居「001」となっている、住居支援の最古参法人なのです。
コロナ禍で住居支援の必要性が再注目される中、居住支援と名乗り悪質な勧誘を行う業者が増加しており、それに伴ったトラブルも増加しています。
犯罪歴があるなどの理由で罵詈雑言を浴びせる業者や、ALLの模倣をした団体が複数存在しているといい、その悪評が本物のALLの悪評とならないか常に注視している状態だというのです。
居住支援を求めるほど貧困となってしまっている方の中には犯罪歴がある方も多いはずで、ひとつでも社会復帰への道筋を外れてしまえば二度と復帰の道はないのかもしれないという方ばかりです。
住居がないという方は「落ちる所まで落ちてしまった」方で、このような方を支援対象とする場合、犯罪歴などの過去の経歴については決して咎めてはいけません。
坂本さんは、万が一支援を求める場合は、メディアに取り上げられたり、顔出しをしたりしていたりする、「すぐには逃げることができない環境を掲示しているような」団体を選んでほしいと呼びかけています。
実際、ALLはNHKや朝日放送などのテレビ番組、YouTubeやホームページなどのネット露出も行っており、要支援者に安心感を与えるような努力を重ねているのだと言います。
入居差別の禁止の法律と実情で合わない環境。社会復帰のファーストステップをより大きくするために。
例えば精神障碍をお持ちで、統合失調症などの理由で叫声が一晩中聞こえる方を快く入居させるアパートオーナーがどれだけいるでしょうか。
居住支援を求める方の中には、様々なハンデを持つ方だっていらっしゃいます。法律ではいかなる理由でも入居の差別をするということを禁止していますが、実情はそうではありません。
集合住宅では入居者全員が幸せに暮らせるよう努力する事が求められているので、ある程度の区別は必要だと坂本さんは考えてます。
あいりん地区に存在する、三条一間が並ぶアパート施設「どや」に住んだところで、十分なスピード感がある社会復帰が望めるとは思えません。
かといって、どのような方であれどその方の理想に合う物件を紹介できるかと言えばそうではないのが実情なのです。
そこで、坂本さんは例としては障碍に対する対策がなされているアパートや特定の階層を積極的に紹介する、特定のバックアップを確約する、などといった対応をしています。
居住支援を求めるいる方に、その方の実情に応じた、社会復帰のファーストステップを住居という武器で支援することが、坂本さんの考える使命なのです。
坂本さんの著書「大阪にきたらええやん」の真意。生活保護を身近に感じてほしい。
人目を気にして生きる現代の人々にとって。生活保護の支給はとてもではないけれど勇気のいる一歩です。
「〇〇さん生活保護受けたらしいわよ」
という悪意が含まれる噂話は、本来だれもが受ける権利のある生活保護にとって全くあっていないものです。
このような噂が流れるのは、生活保護を受けた方が悪いのではなく、その地域の雰囲気が悪いのだと坂本さんは考えます。
となれば、坂本さんはまず自身のいる大阪に来ていただいて、そこで社会復帰をしてしまえばその地域に戻ろうがいちから人生をやり直そうが自由であると考えたのです。
そのことが、坂本さんの著書「大阪に来たらええやん」には入っています。
死ぬという選択肢は最悪で、あなた自身にはとても大きな価値が存在しており、大阪で新しいコミュニティを作り始めるということが最高の選択肢なのだということを伝えているのです。
生活保護はひと月にたいていの場合10万円以上が支給されます。例えば月に5万円しか収入が無い方の自立した極貧生活よりも、たくさんのお金がもらえる為、その方の成長がよりスピードアップする事でしょう。
坂本さんは、今後も居住支援を武器に社会復帰の大きなファーストステップを支援し、たくさんの人生のバックアップをし続けるのです。
NPO法人 生活支援機構ALL https://www.npo-all.jp/
大阪市西成区天下茶屋北2-1-20
著書「大阪に来たらええやん! 西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル 」(信長出版)
佐々木翔子
京都府出身。イベントMCやラジオDJを中心にメディア出演し、玉井祐衣と2人組YouTuberとしても活動
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