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一般社団法人JOY:生理用品の無料配布はただの入口。生理の貧困も性の悩みも発達障害も、全部支えたい。

昨今問題が浮き彫りになってきている「生理の貧困」。

雑貨店を営んでいた佐々木さんは、ニュースで生理用品が買えず困っている人がいる事実を知ります。お店がある場所は、小学校や中学校の通学路で、大学も近かったことから

 

「お店で生理用品を配布しようかな」

と考え、ツイッターにある投稿をしました。

 

このことがきっかけで、生理用品の寄付を申し出る方が現れるなど、多くの反響があったのでした。

今回は、このようなことから「生理の貧困」に立ち向かう活動をされている、一般社団法人JOYの佐々木さんをご紹介します。

 このコラムを読むのに 約6分 かかります。

生理用品の無料配布から見つける、本当の悩み。背景にある問題とは

JOYの活動メンバーは女性理事が2名と男性理事が1名です。

うち女性1名は発達障害がある都合から在宅での勤務を担当。

 

主要なメンバーの他に協力者として、小児科医/産婦人科医、警察の方など20名ほどがいるといいます。

 

 

生理用品が用意できないのは、単に家庭の経済状態だけが問題であるというわけではありません。

 

「生理用品を買えない、買ってもらえない人って、大体背景になんらかの問題があるんですよ。ネグレクトとか、モラハラとか、DVとか。」

「生理用品の無料配布をきっかけにJOYを知ってもらって、本当の悩みから救えたらいいなと思っています。」

 

生理用品が必要であることを理解してもらえない、またわざと買い与えない。親に買って欲しいと頼むことのできる状態ではない。

様々な問題を抱える女性がいる中で、生理用品の供給をきっかけに悩みを相談して欲しいというのがJOYの考え方です。

 

 

例えば生理用品が買えなくて困っている中高生から相談を受けて話を聞くと、

「生理が重くて困っているが、相談できる相手がいない」

「子宮頸がんワクチンを接種したいが、親に打たせてもらえない」

 

など様々な家庭の問題が出てくるものです。

子どもが産婦人科に行きたいと言うと、「妊娠をしたのか」「性病になったのか」と疑いをかけて話を聞こうともしない、なんてことも少なくありません。

 

このような経験をした子どもたちがSNSなどでJOYをしり、サポートメンバーの医師に繋ぎ病院へ同行する。

これがJOYの活動の真髄なのです。

 

なお生理用品がメインですが、下着に関する悩みにも物資の解決を提供しているそうです。

生理用品を買ってもらえない子どもは、往々にしてブラジャーを買ってもらえない子どもである場合が多いからです。

 

「自分も親に下着を買ってもらった経験がない」

「そもそも子どもに下着を買う概念がない」

など、親自身の経験から、子どものころに下着は必要ない、と自分の子どもを強制するケースがあります。

 

メンバーの佐々木さんも子どもの頃はブラジャーを買ってもらえず、お小遣いもなかったため、時々会う親戚からもらったお小遣いで、ブラジャーを購入した過去を話してくれました。

1着しかないうえに、下着を買ったと親にバレてはいけない。お風呂で洗濯してこっそり自分の部屋に干し、同じものを毎日つける生活を送っていたのだそうです。

 

また、父子家庭ではそもそも女児の発育知識不足から、生理用品及び下着の購入に戸惑うパパも多いそうです。

生理用品は買えても女児の下着は買えない。

と考える父親はおおく、そのような場合はネットで購入できる下着を紹介したり、サイズに関する助言をしたり、金銭的理由でない場合には知識提供なども行なっています。

 

 

 

 

 

「生理と性とフェムテック」性別関係なく、生理や性について考える啓発イベント

2022年6月3日・4日に、函館蔦屋書店にて啓発イベントを実施しました。

 

「フェムテックって最近よく聞きますけど、どんなものか知ってますか?」

 

この問いに答えられる人はほとんどいません。

言葉を知ってはいても、詳しくは知らない人が多いのではないでしょうか。

 

では、フェムテックとは何か?

「フェム」は女性、「テック」はテクノロジー。

例えば、吸水ショーツや生理周期の管理アプリ、骨盤底筋を鍛えるなど、これらはすべてフェムテックです。

「生理から更年期まで、女性の健康を維持する健康を科学の力でサポートする」もの全般を、フェムテックと呼びます。

 

 

啓発イベント開催のきっかけは、札幌の大丸に日本初のフェムテック専門店ができたときです。

フェムテック専門店の担当者と話す機会を設けられた際、

「日本では最近やっと流行りだしたデリケートゾーンソープだけど、フィリピンでは当たり前。でもフィリピンの人が日本に来たら、日本ではデリケートゾーンソープがとても高かったり、そもそも売ってなかったり……で困っているみたい」などの話から始まったそう。

 

女性がもっと健やかに過ごせるよう、フェムテックの正しい意味をもっと広めたいと話したきっかけで開催したイベントが【生理と性とフェムテック】です。

 

 

 

「蔦屋に生理用品がずらーっと並んでたら、面白いね」

 

啓発イベントでは、JOYにある生理用品の実物や、吸水ショーツなどのフェムテックアイテムを展示。

開催場所が書店なこともあり、TENGAが作る10代のための性教育バイブル「セイシル」をはじめとする、性に関する絵本なども並べました。

 

イベントでのお話し会では、「性暴力や性被害に合わないためにプライベートゾーンを守りましょう」「父子家庭の方で女性には相談しにくい方は、JOYには男性理事もいるので気軽に話してくださいね」と言った内容や、産婦人科医からの生理や子宮頸がんワクチンの話、男性理事から見た生理の話などをしました。

 

性の話を堂々と話す。

それ自体が啓発に繋がると、JOYは考えています。

大人が性についての話を恥ずかしいものとして隠したりごまかしたりしていると、正しい知識を取り入れる機会がないままになってしまう。

結果、望まない妊娠をしても誰にも相談できず、出産後赤ちゃんに手をかける……

そんな悲しい出来事が減るよう、情報を発信し続けています。

 

啓発イベントは、年2回ほど開催できたらと考えているそうです。

 

次回は2023年1月ごろを予定していており、6月のイベントよりもっと濃い内容の話ができればと、準備を進めています。